私は恐ろしい

 父母の仲が、極端に悪い中で育った、私のようなACの人には、わかってもらえると思う。

 私は恐ろしい。もし結婚したなら、私も父母のように、いさかいと罵り合いの夫婦関係しか作れないのではないか。それだけではない。生家では祖父と祖母も、一方はアルコール依存、もう一方は人格障害者になって、蛇蝎の憎悪劇を日夜繰り広げていた。

 私は、自分と血のつながった二組の夫婦の、憎悪と激怒と不信の嵐に巻き込まれて育った。
 だから、どういう風にすれば、そういう喧嘩口論や罵り合いをしないですむ男女関係をつくれるのか、わからないのだ。

 わからないから、なおさら恐ろしい。
 
 ACの自助グループに通い始めてわかったことといえば、私もまた祖父や父と同じように、将来的に、自分と蛇蝎の憎悪劇を演じることになる女性しか、選べないであろうということだ。あるいは、私のAC性が、妻となった女性を怒らせ、憎ませ、呪わせるであろうということだ。

 私が、心から望んだ平凡で平穏な家庭をつくるすべを、私は持っていない。
 回復のプログラムを、実践すれば、それが学べるのか?
 それを信じることにも臆するほど、今頃になって私の絶望の深さを見出した始末だ。

 私も結婚したなら、父が母に、祖父が祖母にしたように、依存し、怒り、殴るかもしれない。
 ささいなことで、かっとなり、妻を殴ったり蹴ったり、妻が大事にしているものを、投げつけたりたたきこわしたりするかもしれない。あるいは、気が狂ったように、ものを壊したり、いためつけたりするかもしれない。制御できない憤怒にとりつかれ、普段の自分では考えられないような、凶悪なことをやりかねないのだ

 なんということだろう。私は愛したはずの相手を傷つけ、苦しめ、癇癪持ちの駄々っ子のようにしか、ふるまえなくなるかもしれないのだ。愛の存在を暴力でしか表現できない、ねじれた心を知らぬ間に持ち合わせるようになったと感じる。

 かっとなったら何をするかわからない、見境のない怒りの暴走が、暴力となって妻子をみじめな苦痛と屈辱に陥らせる。そんな父親や夫の話を、AC関係の自助グループでどれだけきいたことか。だが、私もそういった夫や父になりかねない。それが、はっきり見えたのだ。

 私の中に、父や祖父と同じ毒蛇が眠っている。それが、結婚後、家庭のストレスの中で、牙をむき、妻子に深々とかみつき毒液を注入する時が、このままではやがて来る。

 最悪なのは、そういう毒蛇の暴力性は、妻や子供のような「近しい関係」にこそ遠慮なく現れる。親密になればなるほど、暴力性が強く濃厚に現れるということだ。

 健康な家庭では、近しい関係になればなるほど、忍耐や寛容さや優しさや配慮が強く濃く現れるはずなのに、ACの家庭は逆の位相が現れる。世の中には、近しい関係になればなるほど、ぞんざいで粗暴で容赦ない言動におよぶ、「親しき仲にも礼儀あり」ということわざを知らない人間もいるが、家庭の中でそれをやったら破綻する。

 なにが「良き父、良き夫になりたい」だろうか。なれるはずもない。まさか、自分の内に、こんな毒蛇がいるとは知らなかった。この毒蛇を、どう殺せばいいのか、変えればいいのか。父や祖父と同じになりたくないと願うだけでは、何も変わらないことだけは、はっきりしている。

 父も祖父も、野獣だった。その子・孫であるわたしだけ、願望や想いだけで人間になれるわけがない。

 願うだけでは、望むだけでは、変われないのはわかっている。

 私は、自分がもっとも忌み嫌った家庭の破壊者の側面を、自分が持っていることをはっきりと知った。神よ、ゆるしたまえ、あわれみたまえ。今夜もひとり泣きながら眠る。
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Commented by 〇ーき at 2009-12-22 22:32 x
心炎さん、こんばんは。
ぼくも母親から受けたものに対して解毒と除念(悪い念を)をしないといつまでたっても社会に適応していけないと思ったのが回復の始まりでした。
今日も気づいたことがありました。ぼくが話をしているとき、相手の携帯にメールがきて、ぼくの話を聞きながらメールを開いていました。そのときぼくは
「人の話は『ちゃんと』聞けっ!」
と思いました。
これって母親がぼくに言ってたことなんですよね。
相手が話をしているときは目を見ろ、手で何かをいじるな、集中しろ、一回聞いたらすべて理解しろ、同じことを二度言わせるな、一度聞いたことは忘れるな、これらができていなかったらそれは『ちゃんと』聞いてなかったお前が悪い、と。
・・・無理っしょ(苦笑
今だからそう言えるけど、当時は必死こいて『ちゃんと』話を聞ける子になろうとしてたんですよね、できなきゃ自分がいらない子になっちゃうんだもん。自助Gでもいまだに仲間の話は『ちゃんと』聞かなきゃって思っちゃうんですよねー。これがぼくの言う『毒』。早く解毒したいです。
Commented by ecdysis at 2009-12-23 13:49
 ○ーキさん、お母さんも、相当に「過干渉」だったんですね。
 思い返せば、私の母もそうでしたね。

 ちいさな子供には無理なのに、大人なみを要求するんですよね。
 ACの親に、とても多いと思います。
 そういう母親自身が、不安で恐れを抱いていて、子供にフラストレーションをぶつけざるをえない。

 でも、子供にはわかる。親が自分を愛していて、子供のためを思ってぶっているのか、自分の欲求不満のために子供をダシにぶっているのか。子供にはちゃんとわかる。
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by ecdysis | 2009-12-21 01:40 | アダルトチルドレン・依存症 | Trackback | Comments(2)