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ecdysisは「脱皮」。管理者・心炎の悲嘆と絶望、歓喜と希望のあやなす過去・現在・未来を見つめ、アダルトチルドレンより回復する為のブログ。メール:flamework52@gmail.com


by 心炎

古き皮袋、古き衣、からっぽの遺産よ

 キリストの言葉に「古い皮袋に新しいぶどう酒を入れるな。皮袋が破れて酒も袋もだめになってしまう」「古い布に新しい布を当てるな。布が引き裂けてだめになる」というたとえ話がある。

 これの意味は、キリスト在世当時、ぶどう酒は壷などのほかに、山羊や羊の皮でつくった新しい皮袋に葡萄汁をいれて発酵させた。そのプロセスで二酸化炭素ガスが発生し袋は膨張し、酒の生成が進んだ。
 これはガスの膨張に耐えるために伸縮性のある真新しい皮袋でなければならなかった。
 それを、すでに一度、新酒の発酵を終えた古い袋に、次の新酒を入れて発酵させると、袋はもはやガスの膨張圧に耐えられない。皮袋は張り裂けて酒が台無しになる。

 では、古い布に新しい布でつぎを当てるとどうなるか。古い布というのは何回も洗われて、もう縮むことがなく、布地も弱っている。その破れたところへ新しい布を当てて洗うと、新しい布だけが強く縮んで、まわりの古い布地を引っ張って、古い布の弱った繊維を引き裂いてしまう。古い布にできた裂け目をふさぐために当てた新しい布が、かえってより多くの裂け目をつくって台無しにしてしまう。

 なぜ、そんなことを思い出したのかといえば、私が、自分の生まれた家や家族をなんとかしようとしたことは、古い皮袋に新酒を入れ、古い布に新しい布を当てるのに等しい行為ではなかったかと感じたからだ。

 私の生まれた家は、すでに用済みの捨てるほかない皮袋であり、継ぎの当てようのない古い布だったのだ。
 父は、私の母という新妻や私や妹や弟という新生児を儲けるべきではなかったのだ。新妻も新生児も、ともにわが生家にとっては、新しい酒であり新しい継ぎ布にほかならなかった。

 父と母が結婚したこと自体、家の滅亡を早めたのかもしれない。母や私や妹が、家の為にがんばればがんばるほど、祖父母や父の依存を増長させ、共依存が深刻になり、祖母の自殺や弟の早世、生家の喪失が引き起こされたのだから。

 
 わが父方の祖父の直系の血筋には、倫理的・道徳的・霊的に、子孫に手渡して継承させるに足る要素が何もなかった。
 健康な家庭ならば、健康な生活感覚や対人感覚や社会関係の態度という要素を、孫や子の代に継承させることが自然にできる。
 だが、何代も続くACの家系では、子孫に渡すべき精神性にかかわる遺産が何もない。

 土地や家屋という物質的なものを受け継ぐのは、目に見える次元の「遺産」でしかない。
 本当の遺産は、顕著な例では「家訓」で表されるような「人として歩むべき教え」「普遍的な精神生活の態度」、すなわち「その家の倫理的規範・精神性」なのだ。

 血統というも不動産資産というも「精神的遺産」の「容器(いれもの)」にすぎないと、やっとわかった。
 子孫に伝える「人としてあるべき規範の教育」がおろそかにされたら、それ以後の血統も資産も永続はしない。
 魂のぬけた肉体は死体であって、腐敗して消えてゆくしかない。
 私の生まれた家は、私が生まれたときに、すでに倫理的道徳的に死んでおり、父も母も私もだれもそれを生き返らすことなど不可能だったのだ。
 そのことが、やっとここ数日で見えてきた。

 嘆きはしない。ただ、もう死んだものを蘇生させようなどという無駄な努力は、二度とすまいと決意するだけだ。
Commented by るり at 2014-10-12 04:46 x
お疲れ様でした。たった一つの学びと、そのたった一つの学びを得る為に負う傷の量の多さを天秤にかけたときに果たして釣り合うのか、私は非常に疑問を持ちます。
それでも学びを得る為に傷を負う勇気・覚悟を持ち続けている事が大切なのかもしれませんね。
Commented by 心炎 at 2014-10-13 01:45 x
るりさん、ありがとうございます。おっしゃる通り、ひとつの学びのためにずいぶん遠回りしていると思うことは多々あります。ですが、人という不器用で欠点だらけの生き物が学習していくのに、効率的で早い道はないのだと最近思います。
 この苦労は、今の自分の顕在意識の成長を兼ねると同時に、私たち自身の「潜在意識の成長」にも必要なことだと考えます。「潜在意識」は埋もれた財宝でも無意識の力でもありません。それは、より大きな自分自身の背後にある人格であり、その成長の窓口として顕在意識があると思える今日この頃です。
 るりさんの人生が、るりさんとるりさんの潜在意識(魂)の成長と生まれてきた目的を果たせるものとなりますように。
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by ecdysis | 2014-10-11 01:41 | アダルトチルドレン・依存症 | Trackback | Comments(2)