祖母についての棚卸し1

 仕事をしていて、密接な関係にある相手が、理不尽で非常識かつ横柄で押し付けるタイプだと、憤怒がわいて許せない気持ちになる。とらわれて相手を徹底的にたたきつぶして排除したい欲望にかられる。決して許さないという裁きの鬼になってしまう。文字通り鬼のような怒りにとりつかれ、夜寝ても明け方に早朝覚醒する。気づいたときには心臓バクバクで汗をかいて怒りとともに目覚めることになる。非常に不愉快な感情が猛り立ち、怒りと不安と粗暴な感情をしずめることが難しくなる。その原因が、19歳のときに許したはずの祖母への感情にあるとわかってきた。

 ほかにも、依存症やAC性で心を病んでいる人たちの理不尽で悪意と粗暴さのある言動にさらされると、非常にとらわれ怒りが生じてストレスがひどくなる。せっかく座禅しながら禁欲して性的自慰行為をやめる努力をしても、そのとらわれのために座禅をする前に破れる。この怒りとマスターベーションについては重大な関係があるけれど、それは後述したい。
 とにかく精神的・人格的に障害があって予測不能かつ非常識な悪意ある反応をする相手には恐れと怒りがまず起こる。これは、幼年期から思春期まで、重度の人格障害者だった祖母から、日常的に受けていた粗暴で悪質な言動への感情と同じだと気づいた。

 祖母そのものをすでに十九歳のときに許しているが、それまでにインナーチャイルドが受けた精神的虐待への恨みと怒りと復讐の叫びまで消えたわけではない。
 幼少期の私にとっては唯一の守り手で正しさの規範だった母を虐待し、私や妹にも毎日のように苦痛を味わわせた祖母への恨みは消えていない。子供だった当時の反応の仕方と抑圧された感情を振り返る必要がある。

 とにかく祖母は異常だった。すでに四十歳台からブルドッグのように肥っていて風呂に入らないので不潔でもあった。顔もふとっていて怒れるブルドッグのようだった。祖母の実家は古い家柄だったが貧しくて、彼女は尋常小学校3年までしか学校に通えなかったというし、実際にカタカナしか書けない読み書き不自由な人だった。

 しかし病気とは認識できなかった。ふつうではないが、ひどく極端な性格の欠点がある人というのが、私の祖母への見方だった。むろん、現在は人格障害など名前をつけられ、あきらかに心の病気なのだが、当時はそういう病名さえなかった。
 とにかく苦痛ないやな悪意の固まりの暴君というのが基本的な認識だった。母へのいじめ虐待は、まさに重度の嫁いびりというには犯罪的なまでの悪質さだったし、子供心に祖母は母をゆえなく激しく憎悪していることは認識していた。

 一例をあげれば、私が10歳ごろに、祖母が祖父の寝間着の内側に何か乾いた粘液のようなものがついていると訴え、明るい日の下で家族じゅうに見せつけた。そして、母が祖父とみだらなことをしたのだと、祖父と母を責めた。もちろん事実無根で、祖母が家族のあれこれをでっちあげ、怒号して責め立てるのが日常だったから、だれも本気にしなかった。
 あとできいたら、その粘液状のものは祖母が自分の鼻汁をなすりつけたものだという。母がその現場を偶然みかけていたので判明した。

 また、祖母は家族が自分の悪口をいっているという妄想をいつも持っていた。そのため家族の団欒や家庭の安息などまったくなかった。たとえば、父母と私たち兄妹の四人で居間にいてテレビをみながら雑談していると、祖母がこっそり障子の陰に立っていて、いきなりガラリとあけて鬼のような顔をして「おまえら、いま私の悪口をいっていただろうと!」怒り狂うことたびたびに及んだ。

 また、祖母が猫なで声で寄ってきて、お小遣いや食べ物を、私や妹にくれるときには、「これやるから、とうちゃんかあちゃんが、何か私のことをいってなかったか」と誘導することも何回かあった。

 祖母は、とにかくあの手この手で母を虐待するネタを見つけることに執念を燃やしていたようだ。

 母も私たちも、いつも家の中では祖母の視線や息づかいや奥の座敷にいるかどうかを気にしてびくびくしていた。文字通りの腫れ物にさわるような扱いだった。
 なにしろ、朝から晩までぶつぶつと、あるいは罵り声で、ほかの家族にはわからない理由で怒りと憎しみを母や家族にぶつけてくるのが毎日だった。おもに母が標的にされて罵倒と故ない憎悪の対象となった。それは祖母が同席するかぎり、居間でも台所でも座敷でも庭でも畑でもどこでも場所を選ばずに起きていた。

 また、母に言いがかりをつけて暴力をふるったり、唾を吐きかけたりもした。幼い妹をおんぶした母を台所の床に仰向けに押し倒し、その上にのしかかって、つぶされかけた妹が悲鳴をあげて泣いたことがある。妹はそのときのことも覚えていて、ほかにもひどい目にあわされたので、祖母にはいまだに恨みをもっているが当然だ。

 祖母がいれば家の中は常に獰猛な虎を放し飼いにして暮らしているような状態だった。そのため、祖母が入院したり温泉に湯治にいったり長期の不在のときには家族全員で喜んで安堵したものだ。


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by ecdysis | 2017-04-29 02:18 | アダルトチルドレン・依存症 | Trackback | Comments(0)