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天才バカボンのパパのようにはいかないのだ。

 繰り返しになるが、私は中学2年の頃から、45年もの間、酔った母のひとこと、「サザエさんやホームドラマのような家庭をつくりたい」という妄想を、実在するものと信じて生きてきてしまった。偽りを真実と思い込んで生きてきたのだから、実のある幸せなど手に入るわけがなかったのだ。

 これが、どんなにおかしなことだったか、別の表現もできると思いついた。

 『サザエさん』ではないが『天才バカボン』のアニメでたとえれば、もっとその変さがわかると思う。

 私は二十歳代から『天才バカボン』大好き人間で、マンガもアニメも、なかばマニアックに見てきた。なので、ハジメちゃん同様の天才神童だったバカボンパパが、どうして今のようなタリラリランなひとになったのか。どうしてママと結婚できたのか。ホンカンさんは東大卒の超エリート警察官僚になるはずが、どうして今のような下品でいい加減なおまわりさんになってしまったのか。レレレのおじさんは、なぜいつもホーキで掃いているのか。私は、みーんな知っているのだ。

 作者の故・赤塚不二夫さんはアルコール中毒者で有名だったが、バカボンパパの名セリフ「これでいいのだ」は、中年になってからは、何事がおこっても大肯定できる悟りの境地のシンボルとして、私の中で不動の地位を占めている。

 その『天才バカボン』のアニメの次回予告で、私がよくみていたシリーズでは、バカボンパパの声優さんが「来週も見ないやつは死刑なのだ」とか「見ないと逮捕なのだ」と視聴者にアピールしていた。

「次週も見ないと逮捕・死刑」などもちろんきついジョークで宣伝文句に決まっているが、もしこれを額面通りに受け取って、本気で「来週も見ないと法的に重罪になる」と信じた視聴者がいたとしたら、どうであろうか? 毎週、バカボンの放送回には番組を見るようにスケジュールを組み、どうしてもだめなときは録画して視聴し、それが事実である証明書を発行してもらわねばと考える。どうしても見ることができなければ、死刑になるから逃亡するか、いさぎよく自首するしかない。あるいは、弁護士を立てて法廷で争わねばと、もろもろの強迫的行動を日常化させねばならなくなる。

『サザエさん』を実在の家庭と信じた私は、バカボンパパの次週予告を本気にする、この気の毒な視聴者とまったく同類で、笑うことなどできないのである。

 書いていて気づいたが、いわゆる「強迫観念」「強迫行動」は、かなりの程度「虚偽を事実と信じこんでいる」ことが原因なのではないかと思う。実現できないことを実現できると思い込んで行動すると、どうしても「ねばならない」思考が病的に進行するようだ。

 私の場合は、「恋愛せねばならない」「結婚せねばならない」「子供をつくって母親に抱かせねばならない」などなど、普通はなりゆきにまかせて自然にそうなっていくことも、すべて「そうあらねばならない」という義務的な強迫観念に裏打ちされていたとわかる。
 それは、「信じた目標の完璧な実現」にとらわれているために、些細な落ち度や不完全さも見逃せず、わずかなキズでも目標を頓挫させる恐るべき過失に感じられてしまうのだ。

 ありえない状態を、ありえる状態と信じて生きるということは、かくも苦しくかくも切なくかくも不毛なものだと言わざるをえない。

 そして、事実ではないことを事実と思い込んで、精神的に野垂れ死に寸前までいった私は、今朝、久しぶりに手に取った原始仏典の釈迦の言葉に愕然とさせられ、胸がつまった。

「まことではないものを、まことであると見なし、まことであるものを、まことではないと見なす人々は、あやまった思いにとらわれて、ついに真実(まこと※)に達しない。
 まことであるものを、まことであると見なし、まことではないものを、まことではないと見なす人は、正しき思いに従って、ついに真実(まこと※)に達する。」(『ブッダの真理のことば 感興のことば』中村元/岩波文庫所収:「真理のことば(ダンマパダ)」第1章 第11~12節)
 [※心炎注:この「真実」とは「仏の法」「悟り」を意味する]

 般若心経の「遠離一切顛倒夢想(おんりいっさいてんどうむそう)」も思い起こされる。
「顛倒」とは「ひっくりかえっていること」を意味する。
 虚構を現実と見なすほど「ひっくりかえった」事柄もあるまい。
 痛切きわまる想いと共に涙が出そうになる。
 私は、そうして45年間を顛倒夢想の中に生きてきたのである。

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by ecdysis | 2018-03-28 20:12 | アダルトチルドレン・依存症 | Trackback | Comments(0)

ecdysisは「脱皮」。管理者・心炎の悲嘆と絶望、歓喜と希望のあやなす過去・現在・未来を見つめ、アダルトチルドレンより回復する為のブログ。メール:flamework52@gmail.com(exciteメールは2018/9/18をもって使用不能となりました)