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ecdysisは「脱皮」。管理者・心炎の悲嘆と絶望、歓喜と希望のあやなす過去・現在・未来を見つめ、アダルトチルドレンより回復する為のブログ。メール:flamework52@gmail.com


by 心炎

「家」じゃない

 いま思うと、私の育った「家庭」は、「家庭」の態をなしていなかった。家の建物や土地という「いれもの」はあった。だが、中に住む人間たちが「家族」をしなかった。少なくとも「健康な家族関係」はなかったに等しい。

 だから、私は、あれは「家」でも「家族」でもなかったと断じよう。
 物質としての「家」はあったが、精神的・情緒的には、私は「家なき子」だった。雨風をよける屋根はあったが、イジメや虐待や辛い経験からかばってくれる「精神的な保護」はなかった。ごはんを食べさせて服を着せてもらったが、人間として必要な「情緒の安定」を吸収させてはもらえなかった。まわりに血のつながった人たちがいつもいたが、私がよその人と健全な関係をつくるのに必要な「社会性」を育ててはもらえなかった。

 私は置き去りにされ、現実を恐れ、読書と空想と妄想にだけ生きる場所を見出す人になってしまった。

 私に「家」はなかった。「家庭」がなかった。そのことを、感情をあらだてることなく、動揺なく認めよう。以前は「このひどい家庭をまっとうにしよう」と、母と同じ夢を見たが、それは「どんなにひどくとも、家族は家族、家は家なんだから、なんとかなる」という期待があったからだ。しかし、それはまったくの幻想にすぎなかった。問題に対する無力を認識しなかったのだ。

 あれは「家」でも「家庭」でもない。ただの精神病者の血族の「巣」でしかなかった。家以前のなにものか、「巣」とか「すみか」としかいいようのないものだ。
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by ecdysis | 2007-09-02 12:56 | メンタルヘルス | Trackback | Comments(0)