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ecdysisは「脱皮」。管理者・心炎の悲嘆と絶望、歓喜と希望のあやなす過去・現在・未来を見つめ、アダルトチルドレンより回復する為のブログ。メール:flamework52@gmail.com


by 心炎

女性依存がはじまったとき

 すでに中学1年のとき、「学級相談」の場で、私は担任の教師に「家族がケンカばかりしていてつらい」と泣いた。そのころから、なにかにすがりたい、頼りたいと気持ちが強く現われたのかもしれない。

「学級相談」というのは、担任が生徒ひとりひとりと勉強や進路や家庭などのことで個別に相談の場をもうけて面談することだ。学校の図書室の一角、書棚の裏側の小さなスペースで向き合い、私は教師に、それまでだれにも話さなかった荒れた家庭の人間関係のひどさを告白した。大人の怒声や罵声や泣き声が絶えず、毎晩のような酒乱の父親の暴力など、話しているうちに、泣くつもりはなかったのに涙がこみあげてとまらない。

 そのとき初めて、自分が、いかに大人どうしの家庭内の言葉や肉体の暴力に傷つき、苦しんでいるかを自覚した。それまでは、慣れて平気だと思っているはずだったのだ。自分が、そういう不安定ないざこざばかりの家を、なんとかしたいと強く思っているのを、最初に自覚した時だった。

 それだけのことを担任の教師に伝えたのは、その男性教師を信頼してのことだったが、無理もないことに、泣いている私に対する教師の返答は「いまは辛くても、きっといつか笑って話せるようになるから」という凡庸なものだった。

 私は、助けがほしかったのだ。いますぐに。だれかに、自分の家をなんとかしてほしかったのだ。幼い私は、教師に助けを求めたつもりだったが、月並みな慰めの言葉に、落胆をおぼえ「やっぱり、この人もわかってくれないんだ」と、涙がひあがった。それから、他人に自分の家庭のことを相談するのはやめようと思った。

 私は、学校ではめいっぱい明るく元気で、積極的な少年だったから、まさかそんなひどい家庭に育っているとは思わず、担任もおそらく困惑し、理解できなかったのだろう。

 家では父親が建設業の会社をおこし、東北新幹線の建設ブームで軌道に乗り出していた。しかし、家の中では精神障害の祖母が、毎朝毎晩、母や家族に罵声を浴びせ、怒声を放ち、被害妄想で家族に疑いをかけ、家庭をめちゃくちゃにしていた。言葉の暴力や、いまでいうモラルハラスメントを常時おこない、家庭の団欒を決して許さない状況が続いていた。

 学校で成績だけは優等生的だった私は、生徒会の役員に選ばれたが、それが苦痛でならなかった。早く家に帰りたいだけで、生徒会というものの意味も役割も責任も、まったくわからない子供にすぎなかった。まぢかに接した教師や生徒は、変わったヘンなやつだと思ったにちがいない。

 家では大人の争いの重圧、学校では生徒会のストレスで、私はしだいに追い詰められてゆき、翌年、なんのまちがいか、生徒会長に選ばれてから、それはピークにたっした。そして、抜毛症(トリコチロマニア)が発生し、髪の毛や眉毛やまつげを抜くことがやめられなくなった。
 
 のっぺらぼうの顔に、もみあげも抜いて存在しない、スズメの頭の帽子のような坊主頭の中学生だ。きわめて奇異な面貌をしていたし、当時の写真を見るとそれがよくわかる。

 学校は男子は坊主頭が「制服」だったので、抜毛による顔の変形は隠しようがなかった。それは身も縮む恥ずかしさだったが、自覚しながらもやめられなかった。私は自分が普通の顔ではない異形で、恥ずかしいグロテスクな顔をしていることがわかっていたから、恥じて恥じて、身も消えんばかりだった。体毛は、一度ぬくとはえそろうまで相当時間がかかるので、抜いたが最後、身もだえしたいような精神的苦痛になった。

 そんなとき、一人の下級生の女の子を好きになった。もちろん、自分がへんな顔の少年だとわかっていたから告白なんてしない。

 あるとき、授業でひどく眠くなって、いねむりしそうになった。
 そのとき、ふと彼女のことを考え、顔を思いうかべた。そうすると、ふしぎなことに眠気がふっとんで消えた。そうか、好きな相手のことを思い浮かべると眠気がさめるのか。

 それから、私は「好きな女性のイメージ」を精神が苦しくなるたびに濫用するようになっていった。もちろん、そのイメージの主に対して現実になにか影響を与えたわけではない。ただ、女性との関係において、常に自分のイメージや思い込みの方を優先させて、現実をみないようになっていった。気づかなかったが、恋愛に関して、過度に空想的関係しかできなくなっていったのだ。

 そうした女性イメージへの病的依存が、女性そのものへの依存に変わっていったのは論をまたない。一番の弊害は、大人の男性に必要な、心理的な要素がつちかわれなかったということだ。女性と暮らす上での自立心や責任感、家庭を守るための現実的な経済力など、大人の男性が備えていなければならないはずの人格的要素が、育たなかったのだ。
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by ecdysis | 2007-09-29 10:27 | アダルトチルドレン・依存症 | Trackback | Comments(0)