腑抜けの系譜2

 私の曽祖父は、明治期に地元の田舎町の娼家の家に生まれて分家した商売人で、金儲けがうまかったらしい。だが、アルコール依存症だったらしく、酒癖の悪い酒乱だったという。

 祖父は、その四男坊として生まれたが、父親の酒乱におびえる生活をしていたようだ。
 私が、母からきいた話では、曽祖父は酔っ払って日本刀をふりまわし、曾祖母を追いかけまわすこともあったという。
 だから、祖父たち兄弟姉妹は、父親が酔って帰るとわかっているときには、曾祖母から「さあ、とうちゃんが酔って帰ってこないうちに、晩飯を早く食ってしまえ」といわれ、そそくさと食事をすませて寝てしまうのが日常だったようだ。

 このエピソードひとつから、いろいろなことがわかる。
 まず、父親が酒乱で、その暴言・暴力によって、家族の夕食をぶちこわしにすることが日常的だったこと。このころ、祖父がどのくらいの年齢だったかわからないが、四男だったことから、幼かったことが推定できる。

 幼児体験で、父親がアルコール依存症で家庭内暴力や破壊行為が日常だったのだから、当然のこと、祖父はアダルト・チルドレンである。すでに曽祖父の代から、わが家系には飲酒問題によって「家庭の団欒」など存在しなかったのだ。

 酔って真っ赤な鬼のような形相で、日本刀をふりまわし、奇声をあげて家族を追いかけまわす父親。悲鳴をあげて逃げ惑う母と、ものかげに隠れて息をひそめる兄弟たちの日常が、同じような家庭に育った私には、目に浮かぶようだ。

 そこには「酔った父親に殺されるかもしれない」という恐怖が蔓延し、忘れられない体験として、祖父には深刻なトラウマになったはずだ。事実、私の弟も、酒乱の父には恐怖していて、生前はいつも「この父親に殺されるかもしれない」とおびえて暮らしていた。そのあげく、不眠症になり、酒で寝つくようになり、やがて彼自身も酒乱となって、包丁やナイフをもって母や私を追いかけまわすようになってしまった。

 曽祖父の場合は、包丁やサバイバルナイフどころではない、人斬り包丁の日本刀をふりまわすのだ。殺人目的の刃物を酒乱の狂気におちいった大人が、家の中でぶんまわすという修羅の地獄が、曽祖父の代にあったのである。

 それを目の当たりに日常的に見た幼児の祖父が、健全な精神性をもつことはまずなかったはずだ。
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by ecdysis | 2008-03-09 12:41 | アダルトチルドレン・依存症 | Trackback | Comments(0)