理想という名の空白

 理想の家庭を築くには、理想の結婚をし、理想の結婚をするためには、理想の恋愛をしなければならない・・・・それが、母の期待と願望を背負った私の少年時代の言葉以前の「理想」だった。

 理想の相手とめぐりあうためには、理想の自分でなければならない。そう思って、自分のためにもなると思い、自分を変えるためにカルトに入ってしまったという側面もある。

 だが、いま、その「理想」には、漠然としたイメージはあっても、どれもこれも具体的なものがなかった。数字で見えるものが何もない。たとえば、年収は最低いくら、とか、相手や自分の容姿はどういう風がいい、とか、こういう間取りと建て坪の家を持ちたいとか、現実的な例証のできる「理想データ」さえなかった。

 それはそうだ。その理想のほとんどは「母のめがね」が基準であり、彼女が望まない限り、具体的なデータを出す必要を感じなかったのだから。私の「幸福」は、「私の幸福」ではなく、「母の幸福」だったのだから、母が逝去してから、私の「幸福のイメージ」の多くは、母とともに昇天してしまった。

 私の「理想」の多くは、わずかな例外をのぞいて、天の空白、この世のものでない空虚に同化し、現世の私を動かす力をまったくなくした。蒸気の圧力を失った蒸気機関車のようなもので、その蒸気は、「母のまなざし」という「マザコン」だったのだから。

 母の期待をなくした私は、今度は自分で自分に期待しなければならない。
 ほかのだれかの期待やまなざしに呼応することだけに幸福を見出すような生き方は、もうしたくないのだ。

 もともと極楽トンボな性格なのかもしれないが、「自分なりの幸福」を、本気で求めていくしかない。そうでなければ、私には生きている意味が見えない。建前や大義名分でなら、いくらでも「生きる理由」はあげられる。だが、本音の部分では、死にたい気持ちと力比べを、無意識にしている。

 酒をやめて、生家も家族もなくして、へなへなになってしまった自分だが、きっと大いなる力が見守っていてくださると信じよう。
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by ecdysis | 2008-04-01 04:29 | アダルトチルドレン・依存症 | Trackback | Comments(0)