アルコール依存症と貧乏

 だれでも貧乏はしたくないし、みじめな生活はしたくない。まともな人間なら、自他を貧窮におとしいれて平然とはしていられない。

 だが、私の祖父や父のようなアルコール依存症の人間は、それをやってしまう。
 今も私個人は似たようなものだが、感情的や人間関係的に不安定だっただけでなく、わが家も経済的には、ずっと不安定だった。それなりに、みんな働けるときに働いて、いいときもあったことはあったが、長くは続かなかった。

 父が今の私の年齢と同じぐらいから、会社が倒産して以来、職を転々とするようになり、50歳代のある一年では、半年しか働かないときもあった。自分の奇矯なアマチュア・マッドサイエンティストのような「趣味」に逃げ場を求めるようになった。金切り声で「働いてカネをかせいでくれ」と毎朝、父親とケンカ口論をする母も、相当に辛かったと思う。

 そういう父親の働きの足りないところを、私は若いころから補い続けて、自分の稼ぎが悪いときには借金して仕送りを続けた。だが、一番がんばったのは、母だ。

 あるときなど、あまりにも生活費に困る日々が続いて、母がこうもらしたことがある。

 「しょうがないから、腎臓の片方でも売ろうか」

 もちろん、そういうつてがあったわけでもなく、テレビの報道などをみて金になると知って、そう語ったのだが、それくらい追い詰められていた。はたで見ている私も、その困窮を見過ごせず、いつも「なんとかしなきゃ、なんとかしなきゃ」とあせって、自分のやるべきこととは異なることで、家計を支える努力をしなければならなかった。

 そういう父親を見て、彼と同じ血をひき、彼と似たところをもつ私も、酒を飲み続ければ、きっと同じ妻子を貧窮に陥れる父親になっただろうと思う。酒をやめても、自分がまともに家庭を運営していく能力が、ありそうもないことがわかる。

 酒乱のアル中の曽祖父をみて育った祖父は、やはりろくでなしの酒乱のアル中になったし、ろくでなしの酒乱の祖父をみて育った父もまた、人格に偏りのある変人で依存性の強いアルコール依存症者になった。次は私の番だ。アルコール依存症の自助グループに通っているから、違う父親になれるだろうか? いや、そんな希望はもっていない。

 自助グループが教えてくれるのは、自分がまともな父親になれるような人間ではないという事実を受け入れ、それを前提にこれからを生きなおすこと、それだけだ。

 アルコール依存症と経済的なことを中心に、私はACとして育ち、そのまま大きくなった。
 私にとって「家庭」とは「地獄」にほかならなかった。だから、自分が家庭をもっても、きっともうひとつの「地獄」しかつくれないだろうと感じるのだ。この「自分が地獄の家庭の再生産しかできない」という事実を、認めたくないがために、この四半世紀、あがき続けてきたのだ。

「よき父、よき夫」の願望など、その「地獄」から目をそらすための「あこがれ」に過ぎなかった。
 どんなに血の涙を流すほどに、憧れ求めても、私の心に刷り込まれた「家庭という名の地獄」という「入れ墨」は決して消せはしないのだ。

 この「入れ墨」が神の御意志ならば、そこにもきっと意味がある。
 それだけは信じている。
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Commented by アル症のRです。 at 2008-09-18 11:47 x
心炎さんなら幸せな家庭を築けるわよ( ^^) _旦~~結婚願望の強さが覗われます。そこまで回復した貴方が、人を不幸に陥れるわけは無いのだから、後は相手の問題でしょう?やってみなきゃ分んないじゃないの(^o^)/男盛りですよ~私達、今が旬ですよ~!!
Commented by 心炎 at 2008-09-18 19:54 x
>Rさん
 激励をありがとうございます。
 女性の目からみて、そういっていただけるとうれしいのですが、私には生涯をかけてやりたいことというか、やらねばならないことがありまして、その仕事はどうも家庭を持つことと両立しそうもないことなのです。

 それは、私が回復しようとしまいと、関係なく与えられたお役目のようなものですから、はじめから両立できないことを納得できれば、これまでのように苦しむことはなかったろうと思います。

 私のその「一生の仕事」については、いつかここで書けるときがくると思います。Rさんも、いいひとみつけて幸福な家庭を築いてくださいね。
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by ecdysis | 2008-09-13 08:47 | アダルトチルドレン・依存症 | Trackback | Comments(2)